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Reiko
Takayama

4/21 (月) の日記

  • 執筆者の写真: 坂本彩音
    坂本彩音
  • 5月11日
  • 読了時間: 3分

更新日:5月11日

仕事終わり、いつもと違う駅から、新井薬師前駅間までの電車に乗る。少し時間があるから本でも読もうとカフェを探すが、どこも18時閉店だった。彷徨った挙げ句、目的地近くのフレッシュネスバーガーに入り、ハーブティーとホットドックを頼んで少しだけ本を読み時間を過ごす。19時少し前に店を出てGoogleマップを見ながら歩いていくと、ゆるい猫と水性演劇部と書かれた看板を見つける。





中に入ると場の空気が良くて安心する。受付を済ませ、スタンプカードと飴を一粒いただき、荷物を棚に置く。小学校の頃、夏休みに通っていたラジオ体操のことをふわっと思い出す。

次々と人が入ってきて、一部の人はある程度知り合いのようだった。

まずは軽い体操をする。身体の状態を確認する体操。一つ一つの動作を丁寧に繰り返す。久しぶりに呼吸を意識する。息がうまく吐き切れないことを自覚する。高山さんの言う通り、繰り返していくとだんだん息が沢山吸えるようになっていった。


それからゆるっと円になって座り、自己紹介と最近あった出来事を話す。私はパーマをかけたてだったので、美容院での出来事を話した。それぞれの生活への目線が面白い。だんだんと個性が見えてくる。

そのままそれぞれが話した最近あった出来事を舞台上に立ち上げていく。

高山さんからスルスルとアイディアが出てきてすごいと思った。

こんなにラフに演劇って作れるのか、と思った。私のまわりはミュージシャンの友達が多く、発表を行うまでのフットワークの軽さや身軽さを羨ましく思っていたけれど、演劇もこんな風に作れちゃうのか、と嬉しくなった。

水性は元々クリーニング屋さんだったこともあって、劇場にはないようなものが沢山置いてある。それらを自由自在に扱って、まるで砂場で黙々と、完成を定めず思いつくままに城を作っていくように次々と場面が出来上がっていく。

全員分のシーンが完成すると、高山さんが上演する順番を考え、それを遠藤さんが丁寧な字で紙に書いていく。

一応演劇部だからね~とゆるすぎる円陣を組んで発表を始める。




 

発表は、創世記のように光が生まれるところから始まった。

賑やかなシーンと静かなシーンがバランスよく進行していく。それぞれの生活が、一本に紡がれていく。

それぞれがどんな仕事をしていて、何歳で、どんな経緯でここにたどり着いたのかも知らないけれど、等しく同じ親密さをお互いに感じていることが伝わる。純度の高いコミュニケーションがここにある。こういう現象が起こることが演劇のいいところだなと改めて思う。

最後のエレベーターのシーン。ただ人が入って、抜けていくを繰り返していくだけなのに、それまでのシーンの総括のような、人生を終えて人間の営みを俯瞰して眺めているかのような気持ちになった。

ほとんどのシーンに参加していて客観的には見れていないし、自分の発表に対してはやりきれなかった悔いが少し残ったものの、きっとこの場限りなのがもったいないほどものすごいいい発表だったと思う。


駅に向かいながら、魔法が溶けるようにそれぞれが初対面だったことを思い出す。それでも家について眠りにつくまで、胸の奥がじんわりと温かかった。

演劇を好きだとまた思えたことが嬉しかった。

今日の出来事を何一つ忘れたくないと思った。

スタンプカードをまた貯めていきたい。


坂本彩音

 
 
 

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